生きていく上で、水はとても大切。
カラダの60~70%を占める水分は、
・栄養素の輸送
・酵素反応
・体温調節
など重要な役割を果たしている。
水分が不足すれば、どんなに栄養価が高いごはんをを食べていても、水分が足りていなければ隅々まで栄養が届かないということでもある。
また、神経系を保護する緩衝材としての役割や、体内に入った毒物を尿として排出する働きも担う。
つまり水分が不足すると、解毒作用にも悪影響を及ぼすのだ。
猫は食べなくてもしばらく生きていられる。
だけど水分を15%失えば、脱水により死亡してしまう。
水は生命維持には欠かすことができないものだ。
猫の飲水量は1日のエネルギー要求量とほぼ等しい。
体重kg×0.75×70(mℓ)
体重が5kgのコブちゃんの場合は約260mlとなる。
この約260mlから、食べ物がエネルギーに変わる際に体内で産生される「代謝水」(約10%)を引いて、約234mlが1日の目安量となる。
だけどコブちゃんはぜんぜん水を飲んでくれない。
以前カリカリを食べていたときは、申し訳程度に水を飲んでいた。
カリカリの水分は10%程度しかないから。
カリカリから得られる水分は、極端に少なく、さすがの猫も喉の渇きを感じるのだろうか。
生食の場合は60〜70%が水分となる。
生食のみに切り替わった今は、食餌由来の水分摂取量はこれまでよりだいぶ増えている。
だけど食餌由来の水分量を計ってみたら100mlしかなかった。
しかも全く水を飲まなくなってしまった。
1日の目安量の半分以下しか摂れていない。
腎不全まっしぐらだったらどうしよう。
飲水量を増やす為に
・水の容器を増やす。
・食餌に水分を足す。
・スープや液状おやつの活用。
などがよく言われる。
もしこれらで飲水量が改善されなければ、塩分摂取量の見直しはどうだろう。
下部尿路疾患の療法食では水を多く飲ませる為にナトリウムを多く含むものがあり、ナトリウム摂取量によって飲水量は有意に変動する。
「正常犬・猫の高ナトリウム摂取による飲水量の変動」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma/63/1/63_45/_pdf/-char/ja
獲物の肉や内臓、血液(塩分濃度0.9%)に含まれる塩分を常に摂取することが想定された猫のカラダは、余分な塩分を体外に排出しやすい構造になっている。
(逆に草食動物は塩分を摂取する機会が少ないので、排出しにくい。)
だから健康なカラダでは、塩分の影響では高血圧にはならない。
ACVIMコンセンサスにおいて、以下のようなエビデンスにより、ナトリウム制限による血圧の低下は一般的ではないと示唆しています。
・鉱質コルチコイド( desoxycorticosterone )投与と高ナトリウム食または、片側腎摘出をした犬において血圧が上昇。
・腎機能が低下しているネコにおいて高ナトリウム食は高血圧を促進しない。
・犬の食塩誘発高血圧は、腎摘出または鉱質コルチコイド投与実験モデルに限定されているよう。
・犬と猫の既存の全身性高血圧において高ナトリウム摂取による血圧への影響は、評価されていない。
ACVIM consensus statement: Guidelines for the identification, evaluation, and management of systemic hypertension in dogs and cats(2018)
引用:犬と猫の獣医栄養学「血圧は人と異なりナトリウム非依存性!?」より。
雑食動物である人間と比べて、猫のカラダは塩分不足は想定されていないのではないだろうか。
フランス・ナント大学を中心としたチームは、2016年時点で存在している猫の塩分(ナトリウム)摂取に関する研究を網羅的に調べなおし、最適な摂取量がどの程度なのかを検証しました。その結果、ナトリウムの摂取不足によって体調不良に陥る事はあるものの、摂りすぎによって何らかの疾患が引き起こされるという明確な証拠は見つからなかったと言います。とは言え無制限に摂って良いというわけではなく、上限値として以下の値を推奨しています。
猫の年齢にかかわらず1日当たり3.1mg/kcal(740mg/MJ)
引用:子猫のへや「猫における塩分(ナトリウム)の許容最大値と最小値」より
1日の塩分摂取上限量は 3.1㎎ × 摂取カロリー となり、260kcalが目安になるコブちゃんは 806㎎となる。
これは食塩に換算すると約2gだ。
生食で鳥モモ肉を260kcal食べてもナトリウムは76.7㎎しかとれないから、1.5gの塩ならば許容範囲だ。
人間同様、精製塩は絶対に良くない。
自然な形でミネラルが摂れる、海塩や岩塩のほうがよい。
アスコルビン酸ナトリウムでも多少補えるし、藻塩を使えば微量だがヨウ素も摂れる。
普段食べているフードから1日のナトリウム摂取量を算出し、上限値まで余裕があれば塩分を追加することで飲水量を増やすことができる。
猫が水をあまり飲まないのは、塩分が足りていない可能性も考えられる。
塩気のあるものを猫が好むのは、嗜好だけではないように思う。
水分補給をしっかりすることは、栄養素を隅々まで行き渡らせ、解毒機能をきちんと作用させる。
猫エイズキャリアの猫には、とても大事なこと。
たくさんお水を飲んで、明日も健やかでいられますように。